
ジョン・ロックの『市民政府二論/統治二論』(しみんせいふにろん/とうちにろん)は、17世紀のイギリスの哲学者ジョン・ロックが書いた本で、民主主義や自由の考え方に大きな影響を与えたものです。
この本の中では、「どうやって正しい政府を作るか」というテーマを考えています。
中学生にも分かりやすいように、重要なポイントをまとめたので確認していきましょう。
当時のヨーロッパの政治はどんな仕組みだった?
ジョン・ロックが活躍していた17世紀のヨーロッパでは、多くの国が「絶対王政(ぜったいおうせい)」という政治の仕組みを取っていました。
この時代の政治は、今では当たり前に守られているようなことが守られないばかりか、貴族や聖職者などの特権階級と呼ばれる一部の人々だけが得をする不平等な世の中でした。
ロックのような人々が「もっと良い政治のやり方」を考え始めた理由でもあります。
1. 絶対王政とは?
絶対王政は、王様(君主)がすべての権力を持ち、国の法律や税金、戦争などを自分の好きなように決められる政治のことです。この時代の有名な言葉に、フランスのルイ14世が言ったとされる「朕は国家なり(ちんはこっかなり)」があります。これは「国そのものが私だ」と言うようなもので、王様の権力がどれだけ強かったかを表しています。
国王の権力がこれほどまでに強大であった理由は、「王権神授説」にあります。
王様の権力は、神から授かった特別なものであるとされていたので、王様に逆らうことは神にさからうことに等しく、国家の在り方や政治の方針にに疑問を持つことが許されなかったという時代背景があります。
2. 問題点
絶対王政には、次のようなひどい問題がありました。
(1) 税金が不公平
王様や貴族(特権を持つ上流階級)は税金をほとんど払わず、農民や町の人々が重い税金を課せられました。貧しい人々が苦しんでいたのに、上流階級はぜいたくな生活をしていました。
(2) 戦争ばかりで国民が苦しむ
王様たちは自分の名誉や領土を広げるために、よく戦争をしていました。その費用を払うのは国民で、兵士として戦争に参加させられることもありました。戦争が長引くと農民たちの生活はさらに苦しくなりました。
(3) 自由がなかった
王様の言うことに反対する人は罰せられたり、捕まえられたりしました。たとえば、宗教の自由が認められず、特定の宗教を信じない人が迫害(はくがい)されることもありました。
(4) 身分制度(みぶんせいど)の固定
生まれた時の身分で一生が決まってしまいました。農民の子どもは農民として一生働かなければならず、上に上がることが難しかったのです。
このような社会を背景に、新たな思想を人々に知らせ、新たな政治制度を生み出そうと考えたのです。
市民政府二論を分かりやすく解説
それでは、具体的に説明を始めましょう。
1. 自然状態(しぜんじょうたい)とは?
ロックは、「もし人間が政府やルールを持たなかったらどうなるか?」という考えからスタートしました。
彼はこれを「自然状態」と呼びます。この状態では、みんなが自由で平等で、誰も他人に支配されたりしません。でも、ルールがないとケンカや争いが起きやすくなります。
2. 自然権(しぜんけん)とは?
ロックは、「すべての人には生まれながらに持っている権利(けんり)がある」と考えました。この権利を「自然権」と呼びます。3つの大事な自然権は:
- 生命の権利:命は誰にも奪われてはいけない。
- 自由の権利:自分の生き方を自由に選ぶ権利。
- 財産の権利:自分の持ち物を守る権利。
3. 社会契約(しゃかいけいやく)とは?
社会契約説は、「国家と市民はお互いに約束をして成り立つ」という考え方です。
市民(国民)は、自由の一部を差し出してルールを守ります。
例:交通ルールを守る、税金を払う、悪いことをしない など。国家(政府)は、市民の命や財産、自由を守ります。
例:警察や消防で安全を守る、争いを裁判で解決する など。

4. 政府の役割(やくわり)
ロックは、政府の役割を次のように考えました:
- 自然権を守ること(命、自由、財産を守る)。
- 争いを解決するためのルールを作り、それを公正に守らせる。
もし政府が人々の自然権を守らなかったり、権力を乱用した場合、人々はその政府を変える権利があるとロックは主張しました。これが「抵抗権」の考えです。
5. ロックの影響
ロックの考え方は、後の民主主義に大きな影響を与えました。たとえば、アメリカの独立宣言やフランス革命の自由や平等の考え方は、ロックの『市民政府二論』に基づいています。
まとめ
ジョン・ロックは、
「みんなが平等で自由であるべき」
「政府は人々のために働くべき」
「悪い政府は変えることができる」
ということを伝えた人です。
彼の考え方は、今の私たちの社会の基本的なルールを作る土台になっています。
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